色を塗るよ

「ごちそうさまでした」

 

毎朝毎晩、家の人全員で食卓を囲む

きちんと正座をし箸も正しく持っていた

 

どんな高級料理を食べさせてもらっても

あたしは何を食べているのかすら分からず

咀嚼して喉を通すのが精一杯だった

 

全く味のしない食事

叔父には「何を食べさせても一緒だ」

なんて皮肉を言われたこともあった

 

でも

 

三年かけて人生が大きく変わった

 

君と食べるご飯はとっても美味しくて

食いしん坊なあたしを見ながら

いつもの優しい笑顔で「美味しい?」

と聞いてくる

 

心から美味しいよ

食事がこんなに楽しいなんて知らなかった

一生分からないままだと思っていた

 

三年前

「声が聞きたくて」と君に電話をした

 

過度のストレスにより失声症だったけど

一生懸命、掠れた声を振り絞った

 

「絵美、大丈夫だから帰ってきな。

今度こそちゃんと私を信じなさい。」

 

どうして分かったの?

あたしが死を選ぼうとしてることを

 

そう、それは最期の電話になる筈だった

 

本当の本当の本当に

君とは通じ合ってる

 

あたしの命は救われた

 

東京に帰ってきてからは

君の叱咤激励をちゃんと受け入れた

 

調子の優れない恋人よりも

あたしをいつも優先して傍に居てくれた

 

応えたくて

毎日、自分で自分を本気で脅した

 

信じさせてくれてありがとう

傍に居てくれてありがとう

応えたいと思わせてくれてありがとう

 

「幸せすぎる」

なんて台詞を言える日が来るだなんて

過去のあたしは想像すら出来なかった

 

デパスよりも依存性があって

そして即効性のある”愛"を山盛りくれる君

 

現在進行系であたしは成長し続けている

一生かけて成長していきたいと思っている

 

努力をやめる事は決してない

 

沢山の初めてをくれて本当にありがとう

 

 

 

君とはよく一緒に空を仰ぐよね

真っ暗な空とはもうサヨナラできた

真っ青な空の下でケラケラ笑うあたしたち

 

色のある人生を送れている

 

何度でも伝えさせて

君と笑い合ってる時が一番幸せだよ

 

mania-c.

 

 

ソコカラナニガミエル?

あたしは美しい獣だ

昔からとてもしたたかだ

自慢出来るし自信がある、本当にしたたかだ

だから生きてこれた

 

喜怒哀楽どれにも属さない感情を知ってる

 

ひとはそれを

優しいだとか温かいだとか

なんだかんだと形容したがる

 

くだらない

 

まだそんな所に居るの?

 

誰も彼もこの高みには登ってこれない

 

あたししか知らない感情

あたしにしか見れない景色

 

優劣をつけたいわけじゃない

 

形はそれぞれ

それが個性

一番も二番もない

あたしにとっては

 

それでも、此処で待ってる

いつでも、いつまでも

 

伝わる?

 

夢の中では笑えるのに

「早く居なくなりたい」

そんな事を毎日願っていた保育園時代

何一つ楽しい事なんてなくて

ヤクザの付き人をしてる16歳上の姉に

手を引かれながら帰るのは今日も事務所

 

4歳でお茶の正しい汲み方を教わって

華道に茶道に麻雀に将棋にパチンコに

それからそれから...

幼い子供にはそぐわないモノばかりあてがわれて

やっぱりまた「早く居なくなりたい」と願う

 

保育園からのイジメは

想定通り小学生になっても継続

でも、なんにも辛くなかった

問題は学校から帰ってからだった

相変わらず事務所に入り浸る日々

ヤクザがなんなのか

小学生のあたしには分からなかった

父親なわけではない

母は秘め事の多い人だったから

本当の事なんて何も知らなかった

 

躾という名の拳が怖かった

学校のイジメなんて比じゃなかった

だからあたしは学年全員から無視されても

何も気にしていないかのように飄々としていた

でも、その姿がイジメをよりエスカレートさせた

泣き喚く様を見たかったんだろう

まるで何も気に留めていないかのように

掴みどころのないあたしは皆に嫌われた

 

友達なんてひとりも居なかった

だけど、ちっとも淋しくなんてなかった

だって、早く居なくなりたかったから

 

あたしが泣くと

ヤクザが夜から朝方まで母を怒鳴りつけた

鳴り止まない怒声、汚い言葉の弾丸

自分が泣いたせいだと酷く自責した

 

それ以来、泣きたい時は

枕に顔を押し付けて声を殺して泣いた

それをする度に、自分の事も殺した

 

幼い殺人鬼だった

殺した数を数えていたら気が遠くなる程

自分を殺して殺して、殺し抜いた

 

あたしは此処に居るけど

何処にも居ない存在

 

さて、このお話の続きはまた今度

 

"夢の中では笑えるのに"

 

初恋

あの頃の事は、上手に思い出せないけど

 

真っ暗な部屋でひとり

ヘッドホンで音楽を轟かせながら

大丈夫、大丈夫と言い聞かせて眠っていた

吐息は外気より冷たかったと思う

 

前にも後ろにも左右にも上下にも進めない中

ある日、彼女は唐突に現れた

 

出会いの秘話は此処には詳しく綴れないな

まだ、もう少し先の未来でそれをしたい

 

おどけるあたしを見ながら貴女は笑ってくれる

 

くすぐったいや

 

いま、を此処に